松本智也は、仏教に傾倒していた。彼は、この世の苦しみから解放されるために、悟りを開こうと決心した。
彼は、すべての煩悩と戦おうとした。欲望や怒りや嫉妬や憎しみや執着や無知やすべてを捨てようとした。
彼は、財産や家族や友人や仕事や趣味やすべてを捨てた。彼は、山奥の寺に入って、厳しい修行に励んだ。
彼は、食事も睡眠も楽しみもなく、ただ瞑想に没頭した。彼は、自分の心を静めて、真理を見つめようとした。
彼は、何年も何十年も何百年も修行を続けた。彼は、老いも病も死も超えた。彼は、時代も世界も変わるのを見た。
彼は、すべての煩悩と戦った。そして、ついに勝った。
彼は、すべての煩悩を消し去った。そして、ついに悟った。
彼は、この世の苦しみから解放された。そして、ついに幸せになった。
しかし、それは幸せではなかった。
彼は、自分の心に何もないことに気づいた。
何か大切なものを失ったことに気づいた。
でも、それが何なのか思い出せなかった。
そんなある日、彼は山から下りて街に出た。彼は人々の営みを見て驚いた。
人々は笑っていた。人々は泣いていた。人々は怒っていた。人々は愛していた。
人々は欲望や怒りや嫉妬や憎しみや執着や無知に満ちていた。人々は苦しみに満ちていた。
でも、人々は生きていた。人々は感じていた。人々は学んでいた。人々は成長していた。
人々は幸せだった。人々は不幸だった。人々は幸せと不幸を繰り返していた。
人々は自分の心に色があることに気づいていた。
何か本当のものを持っていることに気づいていた。
彼は自分と人々との違いに気づいた。彼は自分が間違っていたことに気づいた。
彼は自分が悟ったつもりであっただけだと気づいた。彼は自分が苦しみから逃げただけだと気づいた。
彼は自分が煩悩と戦って勝っただけだと気づいた。彼は自分が煩悩を受け入れて乗り越えることができなかっただけだと気づいた。
彼は後悔した。彼は悲しみに暮れた。彼は涙を流した。
彼は自分の心に戻ろうとした。彼は自分の心に色を塗ろうとした。彼は自分の心に本当のものを埋めようとした。
でも、もう遅かった。彼は自分の心に何もないことに気づいた。
何か大切なものを失ったことに気づいた。
でも、それが何なのか思い出せなかった。
彼は、空虚なまま永遠に生きた。
0 件のコメント:
コメントを投稿