彼は何もかも失ってしまった。家族も友人も仕事も。彼は病気に苦しみ、貧困に悩み、孤独に泣いた。彼はありとあらゆる方法を試して救われようとしたが、どれも効果がなかった。医者も神父も占い師も、彼には何の助けにもならなかった。彼は全てを諦めて、ただ死を待つしかなかった。
ある日、彼は公園のベンチに座っていた。彼は空を見上げて、最後の願いをした。「世界が平和になりますように」と。彼はそれが無意味な願いだと分かっていたが、それでも言ってみた。彼は自分の人生には何の価値もないと思っていたが、せめて他の人たちが幸せになればと思っていた。
すると、不思議なことが起こった。空から光が降り注ぎ、彼の体を包んだ。彼は驚いて目を閉じた。光は暖かくて心地よかった。彼は何かが変わるのを感じた。
光が消えると、彼は目を開けた。すると、目の前に美しい女性が立っていた。彼は彼女が誰なのか尋ねた。
「私は平和の女神です」と女性は言った。「あなたの願いを聞きました。あなたは世界平和を望みましたね」
「ええ、そうですが」と彼は言った。「でも、それは叶うわけがないでしょう」
「そんなことはありません」と女性は言った。「あなたの願いは素晴らしいものです。あなたは自分のことよりも他人のことを思いやる心を持っています。あなたは世界平和に値する人です」
「私が?世界平和に?」と彼は信じられない顔をした。
「はい、あなたが」と女性は微笑んだ。「あなたの願いを叶えるために、私はあなたに特別な力を与えます。あなたが触れる人や物や動物に、平和と愛と幸福を与える力です。あなたが歩くところに、花が咲き、鳥がさえずります。あなたが話す言葉に、人々は感動し、争いや憎しみや恐怖を忘れます。あなたが笑うときに、世界中が笑います」
「本当ですか?」と彼は目を輝かせた。
「本当です」と女性は言った。「これからあなたは世界中を旅して、平和の使者として活躍します。あなたは多くの人々に出会い、多くの場所を訪れます。そして、あなたは自分の幸せも見つけます」
「私の幸せも?」と彼は聞いた。
「もちろんです」と女性は言った。「あなたにぴったりの人がいます。あなたと同じくらい優しくて思いやりのある人です。あなたと一緒に旅をしたいと思っています」
「誰ですか?」と彼は興味津々で聞いた。
「それは私です」と女性は言って、彼にキスをした。
彼は驚いて、それから嬉しくて、涙を流した。彼は女性を抱きしめて、ありがとうと言った。彼は自分が救われたと感じた。彼は自分が愛されたと感じた。彼は自分が世界平和になったと感じた。
そして、彼らは手をつないで、公園を出て行った。彼らの後には、虹がかかっていた。
これが、彼の最後の物語だった。そして、彼の最初の物語でもあった。
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