犍陀多は、地獄の底で苦しみながら、ふと空を見上げた。すると、そこには美しい蓮の花が咲いていた。その花の中には、お釈迦様が座っている姿が見えた。犍陀多は、お釈迦様に助けを求める声を上げたが、届くはずもなかった。
お釈迦様は、犍陀多の声を聞いていた。お釈迦様は、犍陀多の過去世を見てみた。すると、犍陀多は生前、悪事ばかりを働いていたが、一度だけ蜘蛛を殺さなかったことがあった。その時の蜘蛛の糸が、お釈迦様の手元にあった。
お釈迦様は、犍陀多に対する慈悲の心から、その蜘蛛の糸を地獄に垂らした。そして、犍陀多に向かって言った。「この糸につかまって、上に登ってきなさい。しかし、他の者に触れてはならない。もし触れたら、この糸は切れてしまうでしょう」
犍陀多は、お釈迦様の声と蜘蛛の糸に気づいて喜んだ。そして、早速その糸につかまって上に登り始めた。しかし、途中で他の地獄の者たちが、同じようにその糸につかまろうとした。犍陀多は、自分だけが助かりたいと思って、他の者たちを突き飛ばしたり罵ったりした。
お釈迦様は、犍陀多の行動を見ていた。お釈迦様は、犍陀多が助からないことを知りながらも、その蜘蛛の糸を垂らしたのだった。それはなぜかというと、お釈迦様は犍陀多に対してだけでなく、他の地獄の者たちに対しても慈悲の心を持っていたからである。お釈迦様は、その蜘蛛の糸を通じて、地獄の者たちに仏法を聞かせるつもりだったのだ。
しかし、犍陀多はその意図に気づくこともなく、自分勝手に上に登っていった。やがて、彼は蓮の花まであと少しというところまで来た。そこで彼は振り返ってみると、自分以外にも沢山の者がその糸につかまって上に登ってきていることに気づいた。
「何だこれは!この重さでこの糸は切れてしまう!早くどけ!どけ!」と叫んだ。
するとその時だった。その声が響くや否や、その蜘蛛の糸は切れてしまった。そして、犍陀多は他の者たちと共に、再び地獄の底に落ちていった。
お釈迦様は、その様子を見ていた。お釈迦様は、犍陀多に対して怒りや憐れみを感じることもなかった。お釈迦様は、ただ淡々と言った。
「犍陀多よ、あなたは自分の罪を悔い改めることもなく、他の者を軽蔑することもやめなかった。あなたは、この蜘蛛の糸を通じて、仏法を聞く機会を得たのに、それを無駄にした。あなたは、まだ地獄に留まるべきである」
そして、お釈迦様はその蓮の花から立ち上がって、別の場所に移動した。その後、犍陀多は何度も地獄で苦しみ続けたが、二度とお釈迦様の姿や声を見聞きすることはなかった。
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