彼は『世界平和の祈り』を30年以上、毎日のように祈っていた。彼は戦争や暴力、貧困や病気、憎しみや差別に苦しむ人々のために、心から平和を願っていた。彼は自分の名前も国籍も教えなかった。彼はただ、祈る人として知られていた。
彼は世界中を旅して、様々な場所で祈りを捧げた。彼は戦場で祈った。彼は難民キャンプで祈った。彼は病院で祈った。彼は寺院や教会やモスクで祈った。彼は山や海や森で祈った。彼はどこでも祈った。
彼の祈りは、多くの人々に感動を与えた。彼の祈りは、多くの人々に希望を与えた。彼の祈りは、多くの人々に勇気を与えた。彼の祈りは、多くの人々に愛を与えた。彼の祈りは、多くの人々に平和を与えた。
しかし、彼自身は平和を感じることができなかった。彼は自分の祈りが本当に世界を変えているのか疑問に思っていた。彼は自分の祈りが本当に聞かれているのか不安に思っていた。彼は自分の祈りが本当に意味があるのか悩んでいた。
ある日、彼はひとりで海岸で祈っていた。すると、突然空が暗くなり、雷が鳴り始めた。彼は驚いて空を見上げると、そこに巨大な光の玉が現れた。光の玉から声が聞こえてきた。
「私はあなたの祈りを聞いてきました。あなたは30年以上も世界平和の祈りを捧げてきました。あなたは私にとって最も尊い存在です。あなたに何か願い事があれば、何でも叶えてあげましょう」
彼は信じられない気持ちで声に答えた。
「私に願い事があるとしたら、それは世界平和です。私はそれ以上に何も望みません」
光の玉から声が再び聞こえてきた。
「それは残念です。私はあなたに個人的な願い事を叶えてあげることしかできません。世界平和というのは、私にも力が及ばないことです。それは人間自身が努力して達成しなければならないことです」
彼は悲しくなって言った。
「では、私の祈りは無駄だったということですか?私の祈りは何も変えられなかったということですか?」
光の玉から声が優しく聞こえてきた。
「いいえ、あなたの祈りは無駄ではありませんでした。あなたの祈りは何も変えられなかったわけではありません。あなたの祈りは、少なくともあなた自身を変えました。あなたは祈ることで、心を清め、魂を高め、人間性を深めました。あなたは祈ることで、多くの人々に影響を与え、感化をし、導きました。あなたは祈ることで、世界に平和の種をまきました。あなたの祈りは、あなた自身が平和の象徴となりました」
彼は涙を流しながら言った。
「でも、私はまだ平和を感じることができません。私はまだ平和を見ることができません。私はまだ平和を知ることができません」
光の玉から声が優しく聞こえてきた。
「それはあなたがまだ自分自身に平和を与えていないからです。あなたは他人に平和を与えることはできましたが、自分に平和を与えることはできませんでした。あなたは他人に愛することはできましたが、自分を愛することはできませんでした。あなたは他人に許すことはできましたが、自分を許すことはできませんでした。あなたは自分に対して厳しすぎました。あなたは自分に対して不満や後悔や罪悪感を抱いていました。あなたは自分に対して平和ではありませんでした」
彼は静かに聞いていた。
光の玉から声が優しく聞こえてきた。
「だから、私はあなたに一つだけ願い事を叶えてあげます。それは、あなたが自分自身に平和を与えることです。あなたが自分自身に平和を与えれば、あなたは世界の平和を感じることができます。あなたが自分自身に平和を与えれば、あなたは世界の平和を見ることができます。あなたが自分自身に平和を与えれば、あなたは世界の平和を知ることができます。それが私があなたに与えられる最大の贈り物です」
彼は驚いて言った。
「本当ですか?それが本当に私の願い事ですか?」
光の玉から声が優しく聞こえてきた。
「本当です。それが本当にあなたの願い事です。それでは、さようなら。私はこれから消えてしまいます。でも、私はいつもあなたの心の中にいます。私はいつもあなたの祈りに応えます」
そう言って、光の玉は消えてしまった。
彼はひとり残された。
彼は空を見上げた。
彼は海を見渡した。
彼は自分の心を見つめた。
そして、彼は笑った。
彼は泣いた。
彼は感謝した。
彼は許した。
彼は愛した。
彼は平和だった。
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