彼は客観的には何の効果もお経を30年以上唱え続けたが、それでも信仰を捨てることはできなかった。彼は自分が救われる日を待ち望んでいた。彼は自分の罪を悔いていた。彼はかつて、妻と子供を殺した男だった。彼は酒に溺れ、暴力を振るっていた。ある日、ついに彼の手が血に染まった。彼は逃げ出したが、やがて自首した。彼は裁判で無期懲役の判決を受けた。彼は刑務所で仏教に出会った。彼は仏教の教えに心を打たれた。彼は自分の罪を償うために、毎日お経を唱えることにした。彼は仏樣になりたかった。
しかし、30年が過ぎても、彼の心に平安は訪れなかった。彼はいつも妻と子供の顔を思い出した。彼はいつも自分の罪を責めた。彼はいつも涙を流した。彼はお経を唱えることで、少しでも救われることを願った。しかし、それは空しく響くだけだった。
ある日、彼は刑務所の医師から余命宣告を受けた。彼にはあと数ヶ月しか生きられないと言われた。彼は驚いたが、すぐに受け入れた。彼は死ぬことを恐れなかった。むしろ、死ぬことで解放されると思った。彼は最期までお経を唱えることに決めた。
そして、その日がやってきた。彼は病室で息を引き取ろうとしていた。彼の周りには看護師や医師や僧侶が集まっていた。彼らは彼に別れを告げていた。しかし、彼はそれに気づかなかった。彼は目を閉じて、お経を唱えていた。
その時、不思議なことが起こった。彼の耳に、妻と子供の声が聞こえてきた。
「パパ、ごめんね」
「お父さん、許して」
「愛してるよ」
「ありがとう」
彼は目を開けてみた。そこには妻と子供の姿があった。彼らは微笑んでいた。
「これは・・・夢?」
「違うよ、パパ」
「現実?」
「そうだよ、お父さん」
「どういうこと?」
「これが仏様のご加護だよ」
「仏様?」
「そうだよ、パパ。あなたがずっとお経を唱えてくれたから、仏様があなたを許してくれたんだよ」
「本当に?」
「本当だよ、お父さん。あなたはもう罪を償ったんだよ」
「ありがとう・・・ありがとう・・・」
彼は涙を流しながら、妻と子供に抱きついた。彼らも彼に抱きついた。彼らは幸せそうに笑っていた。
その時、彼の心臓が止まった。彼は静かに息を引き取った。
看護師や医師や僧侶は、彼の死を確認した。彼らは哀悼の意を表した。しかし、彼らは不思議に思った。彼の顔には、安らかな笑みが浮かんでいた。彼はまるで、何か素晴らしいものを見たかのようだった。
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